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concept design 01 APOLLO 黒崎敏 satoshi kurosaki bath living

実験的かつ革新的なバス空間を提案 建築家たちによるコンセプトデザインプロジェクト | 01

BORDERLESS
自然とつながる。
そこには意識的な境界はない。
北海道ニセコに計画している会員制ヴィラのクラブハウス内に設えたパブリックバスをもとにコンセプトデザインを実施。
眼前のインフィニティ水盤と連動するように設えたスクエアなバスタブは、一段下がったサンクンスタイルのリビングソファを意識 しており、バスルームに本来備わる真のコミュニケーションプレイスをつくり上げている。

テーマは「連続」と「中間領域」。
- バスタブの周囲に浅い水盤を設け、奥に設えたインフィニティ水盤とも連続させながら羊蹄山の借景を水面に映し出す。
- バスの上部に電動のスライド式天窓を設け、バス空間と空と連続させる。
- バス両翼空間にアウトドアリビングやサーマルスプリングを設け、内外のアクティビティを連続させる。

手前と奥、上と下、中と外が連続するプラットフォームとしての中間領域を意識的につくり出すことで、単なる空間ではなく真の居場所をつくり出し、オルタナティブなリビングを構成している。 concept by satoshi kurosaki

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interview

バス空間はリビングのように進化する
APOLLO / 黒崎敏 satoshi kurosaki

戸建や集合住宅、別荘、ホテル、コンドミニアム、レジデンスなど、
国内外で設計した建物は200件超。世界中で数多の受賞歴を誇り、
ハイクラス・ラグジュアリーの最前線で活躍する
APOLLO代表・黒崎敏氏が考える、これからのバス空間のあり方とは。

text by toshiaki ishii (river co., ltd.)
photograph by yu kawakami

バス空間を「プレイスメイキング」する。

――黒崎さんの考える、上質なバス空間の条件を教えてください。

単なる機能だけではなく、「やっぱりお風呂に集まってくる」という魅力があることでしょうか。「プレイスメイキング」という言い方をしますが、バス空間は、もっと居心地がよく、インスピレーションが湧くとか、なんとなく行きたくなってしまう居場所に変えることができると考えています。

こうしたプレイスメントは、断片的なスペースやシーンだけでは成立せず、内と外、あるいは中間領域との連続性がないとつくることができません。それらが連続したとき、どういうストーリーで語りかけてくるか、しっかりとしたコンセプトをつくることができれば、バス空間は住まいの中心軸になれると思います。ただ、毎日使う空間だけれど、そこに行くととても落ち着いたり、円滑なコミュニケーションができるといった副次的なものがなければ、そうはなれません。デザインや機能を超えて、そうしたものを取り込んでいくのが上質なバス空間であり、それをつくり手と施主がお互いしっかり考え始めるところからワクワクするようなプロセスが生まれてくるのではないでしょうか。

――設計の際、どんなところからインスピレーションを得ているのですか。

最近は「バスルーム」と意識せずに設計しています。バスルームとなると、機能的にこうだとか、こういうふうにせざるを得ないというバイアスがかかってしまうので、リビングやベッドルームといった、バス空間以外の空間、あるいは屋外の家具やベンチみたいな空間だと思って設計することがよくあります。あとは、バス空間のサッシの設計はどうあるべきか、そこから見える景色や、中に入ってくる光が反射して水面にできる影や揺らめきなど、環境特性から考えることも多くなりました。海の空間なのか、森の空間なのか。ニセコのようにグリーンシーズンとウィンターシーズンがある場所だと、圧倒的に内装の考えが違ってきます。

バス空間も、四季の移ろいや用途に応じて可変的であるべきだと思っていて、その可変性についてもよく考えます。リビングならクッションやアートを替えるだけで雰囲気が変わりますが、これまでのバス空間は、光や音の調整や、映像を入れるなどはできていても、インテリアまでアイデアが及んでいませんでした。しかし、バスタブのそばに家具を置くだけで目の前の風景は変えられます。最近、マルチハピテーション(複数の住居)やデュアルライフのように、自分が移動することで体験をチェンジさせる人が増えていますが、そういうライフスタイルが注目されるようになったのも、自分の居場所に変化がないと人は耐えられないからではないでしょうか。トイレやバスルームといったユニット化されたものは、変化の少ない空間になりがちなので、そこをどうやったら変えていけるのか、ここ数年は力を入れて取り組んでいます。


閉じた空間からつながる空間へ。

――これまで体験したバス空間で、印象深かったところを教えてください。

ニセコの名旅館「坐忘林」のオーナーが3棟の古民家を移築してつくった「SHIGUCHI」の浴室です。アートに囲まれながら宿泊できる「ギャラリーステイ」という言い方をしていましたが、リビングとつながった浴室に、石をくり抜いただけのプリミティブなバスタブがあり、こういう感覚をバス空間で体験できるのは、とてもインスピレーションになりました。余計なものがほとんどない空間の中に水の音だけが響き、窓の外には遠くに山の稜線が、近くには白樺の木立が連なっています。モノクロームの世界なので、それが室内の壁や柱と調和していて、どこか水墨画の中に入り込んでしまったかのような没入感がありました。

――施主から多いリクエストはどんなことでしょう。

個人の趣味嗜好が多様になり、ひとり1バスとまではいきませんが、ライフスタイルに合わせた使い方をしたいという要望が増えています。例えば、就寝前にちょっと浸かるだけなので、自分の体型に合った小さなバスタブがほしいとか、足だけ浸かりたいとか、ヘルスケアを含めたケアワークの一環として、バス未満というか、もう少しパーソナライズされたものがほしいという声があります。

その一方で、西欧のスパ文化のようにコミュニケーション空間としてバスをとらえる人も増え始めています。家族はもちろん、友人や会社のボードメンバーなどと一緒にお湯に浸かりながら、リラックスして話ができたり、ドリンクを飲みながら交流したり、スタイルはさまざまですが、そういった空間がリビングの一角のようにあるといいという要望が多くなっています。その場合、バスタブの中で長時間過ごすので、温泉のような熱いお湯というわけにはいきません。水着を着用してみんなで入るサーマルスプリング(※1)のようなイメージになります。
※1)水着を着用して入る温浴施設のこと。男女共用のホットバスとジャグジー、ミストサウナなどが設置されることが多い。

――最近手がけたなかで、印象的だったプロジェクトを教えてください。

都内の住宅で、屋外プールの横に浅い水盤のような場所をつくり、その水上に浮かんでいるような感じにジャグジーを置きました。道路面から植栽のグリーン、プール、庇のついたテラス、室内とレイヤーをいくつか区切ったなかで、プールは中間領域の少し外にあり、ジャグジーに浸かりながらテラスの屋外家具でくつろぐ人とコミュニケーションをとることができます。

また、葉山で手がけた集合住宅では、眺望のいいバルコニーにバスタブを設けたケースもあります。最近、室内のメインとなるバスとは別に、エクストラで屋外にユニークなバス空間をつくるケースが増えています。バルコニーも奥行きが3mくらいあると屋外家具もバスタブも置くことができます。

ここ数年、屋外家具とバスタブが等価にとらえられていて、バスタブを座具に見立てて、そばに家具を置いてコミュニケーションをとるパターンが増加傾向にあります。こういう空間を外につくるか、内につくってビューバスのようなかたちにするかは両方ありますが、バスタブの置き場所が多岐にわたるようになり、バスタブを中心に新しい空間が生まれている印象があります。

――バスルームが外に拡張していっているようですね。

これまでのバスルームは閉じた空間になっていて、それ以外の空間とつながりがもちにくかったと思います。つくり手側にもそういうバイアスがあったのかもしれませんが、環境との連続性や、バスタブをここに置いたらどうなるのだろうとか、バスタブを家具としてとらえたらどう置くべきかなど、固定観念を開放しながら自由に発想していくと、どんどん新しい居場所ができていく気がします。そういう居場所は、豊潤な体験とか、感情の動きでなんとなくそこに行きたくなる、個人的な愛着があるといった、さまざまな特性が加わった瞬間に、言葉にしなくても伝わる心地よさが生まれます。今後は、そうしたユニークなバス空間を求める施主の声に対して、つくり手がきちんと答えを出していけることが重要になると考えています。

コミュニケーションが生まれる仕掛け。

――従来のシステムバスや在来浴室にはどんな不満がありましたか。

システムバスに関しては、やはりバスルームのデザインの延長上で考えられているので、内部に閉じた商品になっている気がします。そのため、バス空間を外とつなげようとする建築家や設計者にはデザインしにくかった部分があります。一方で、在来浴室は現場で一からつくり、多業種の人たちが分業するため、どうしても不完全なものになりやすく、レディメイドとオートクチュールの中間のような考え方が欠けていたのが少しストレスでした。

システムバスが一般化したことで、このくらいの広さでいいとか、機能が全部ついているからいいとか、みんながそういうものだとあきらめていたところがあったと思います。バス空間に対する想像力の限界ができてしまったおかげで、今度は在来浴室で「なんでもつくっていい」となったとき、想像力が追いつかない。これは建築家や設計者などのつくり手側にも責任があると思います。


――今回、aq. を意識してデザインした空間についての説明をお願いします。

現在、北海道ニセコで高級分譲ヴィラを中心とした大規模リゾート開発に携わっているのですが、今回のバス空間はその共用施設となるクラブハウスのバス空間をイメージしてデザインしました。中央に2×3mのバスタブを置き、周り浅いに水盤を設けて水が連続して見えるようにしています。バスタブの三方はソファのようなつくりで、ベッドルームやソファのあるリビングと同じように居心地よく過ごせます。家族や友人と一緒にお湯に浸かりながらコミュニケーションがとれる空間にしたいと考えました。

奥には室内が外に迫り出した縁側のような空間があり、水盤でつなげて中と外の境目を曖昧にしています。これは昔から日本ではなじみの深い「中間領域」を広くとった設計で、庇を出して壁はないけれど、空間化したものを屋外に設けました。こうして、屋外と屋内の空間を等価に扱い連続させることで、内にいながら外を感じられ、人と自然がゆるやかにつながります。バスタブに浸かっていても広域な視野が得られるのが、今回のポイントになっています。

バス空間はもっと価値ある場に変わる。

――バスタブを取り囲む部分はどうなっていますか。

バスタブを中心に、XYZの3軸方向の空間が広がっているイメージです。両側はミストサウナやドライサウナなどのサーマルスプリングのようなアクティビティがあり、サンラウンジャー(※2)などの屋外家具を置いて、バスタブとは違う楽しみ方ができる場を用意しています。バスタブの上にはそれと同じ大きさのトップライトを設置し、上空の景色も見えます。また、バスルームに足を踏み入れたとき、目線が奥にいくとインフィニティみたいにお湯が流れていたり、お湯の流れや音まで表現したいと思っています。
※2)プールサイドなどの屋外で日光浴を楽しむことを目的に用いられる寝椅子。

――こうしたデザインに至った背景を教えてください。

これまでのバス空間の概念を変えてみたいという思いがあります。もっと居心地のいい「居場所」にして、インスピレーションが湧くとか、なんとなく行きたくなってしまう居場所のように、バス空間の価値を上げるような試みをしたいと考えました。

空間認知科学で「イソビスタ」という言葉がありますが、簡単にいうと、ある場所から障害物などがなく見える範囲のことを指します。人間は、ひと目で視界や見晴らし、全景から空間を把握して、居心地の善し悪しを判断し、基本的に狭い空間から広域を見渡せるときに最も快適に感じるといいます。バスタブに浸かりながら、目の前にパノラマに広がる景色があり、上空も抜けているというのは、四季折々の変化や、昼夜、天候によってもさまざまな違いをはっきり感じられます。これくらい豊かな空間であれば、結果的に心地がいいので人が集まってくると思います。

―― aq. に期待することやご要望があればお願いします。

つくり手を触発して新しいつくり方が思い浮かぶようなユーザビリティというか、商品性やブランド特性が出てくると、建築家や設計者は勝手に組み合わせたり、こんなのができないかといったふうに動き出すでしょうし、施主側もインスピレーションが沸き始めて議論が生まれるようになると思います。単なるバスルームの商品開発ではなく、新しい概念としてOSのようなシステムが内包されたブランドに成長するのを期待しています。

最初から完成されている必要はなく、料理でいうと万能な出汁みたいなものがつくれればいい。その出汁を使っていろんな人たちが料理をし始めるくらいの感覚でスタートするのがいいのではないでしょうか。

バスルームを自分と向き合う、精神への深度をつくっていく場所としてとらえると、非常に重要な空間になります。それがベッドルームとどちらが大切だとか、そういうことを考えると等価ですし、今後はもっとみんながこだわっていく空間になると思うので、おそらくバス空間はこれくらいでいいという発想がなくなっていくでしょう。まずはブランドのもっているアイデンティティを表現することで、それをなくさせること。そして、きちんとした出汁がとれていれば、あとは多少オリジナリティが加わったとしても、アウトプットはすごくいいものになっていくと思います。

profile

APOLLO

黒崎敏  satoshi kurosaki
APOLLO architects & associates  代表取締役/建築家

1970年石川県生まれ。明治大学理工学部建築学科卒。大手メーカーの商品開発、設計事務所主任技師のキャリアを経て、2000年に「APOLLO一級建築士事務所」を設立。邸宅、ヴィラ、リゾートホテル、商業施設の設計のほか、企業の商品開発やブランドデザインにかかわる。世界的デザイン賞である「Wallpaper Design Award」 で「Best New Private House」を受賞するほか、「Archiproducts Design Awards」では5年連続日本人審査員を務めるなど、海外でも高い評価を得ている。主な著書に『新しい住宅デザインの教科書』(エクスナレッジ)、『新・可笑しな家』(二見書房)などがある。
kurosakisatoshi.com

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